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「耳に積もる大阪」 第2回 新世界・アメリカ村

2025 12/29
column-land 耳に積もる大阪
2025年12月29日

この連載の主体となるフィールドワークについて
街中のある一点にじっと立ち続け、行き交う人々が落としていく断片的な声を文字に起こす——

◆「文字起こし」のいくつかの約束
1. フィールドレコーディングした音源をもとに、手作業で行う
2. 表記において、発話者を区別しない
3. 句読点は使わない。個々の発話を全角スペースで連ね、一本の流れにする
4. 改行は全体のリズムを整えるための、筆者の趣向によるもの
5. 「!」は使わない
6. 個人名は、音数をそろえ「」で記す
(著名人はそのまま使うことがある)
7. 笑い声、泣き声、咳といった曖昧な音は文字にできない
8. 動物の鳴き声も文字にできない
9. 文脈が削れた断片的な声には、筆者の主観性が混ざっている

新世界・アメリカ村

心斎橋を後にし、さらに南へ、新世界へと歩いた。商店街を抜け、『なんばグランド花月』の前を、いつか新喜劇が終わった時間帯に立ってみよう、と素通りし、それから高架下をひたすら歩いた。

とある住宅街に差し掛かかったころ、軒先に何やら人だかりが見えた。どうやらそれはラーメン屋に並ぶ人々の行列のようで、彼らは迷惑にならないよう道の向こう側、マンションの植え込み沿いに置かれている。その凝縮された”ざわざわ”の中からひとつ、声が聞こえてきた。

「お前もチック症になるかもしれんのやぞ」

なんとなく南へ進めばいいだろうとマップも見ずにだらだら歩いていると、遠くにあったはずの通天閣はすっかり実感できる大きさになっていた。どうやら新世界に着いたらしい。

通天閣本通商店街という道を歩く。時計は19時をまわっていた。大半の店先のシャッターはすでに閉じており、ほとんどひとけを感じないが、アーケードの上からは『Nujabes』が流れていた。通りが静かでダンシングな雰囲気に包まれる。

それから商店街を抜け、通天閣の下で一度立ち止まった。マップを見てみると、私が歩いてきた道は、塔から北側に分かれる三本道の内の一本だと知った。東西には、さらに一本ずつ道が分かれていた。にもかかわらずだ、南側は一本だけだった。二本増やせばタコになれるのに。

南の一本道である通天閣南本通りも歩いてみたが、そこは道幅が狭く、人と音の密度が高かった。そういう場所から聞こえてくる声は、汗のようにギトギトとしていて、一日に何度も立てない。あるいは単に、夏のせいかもしれない。少々疲れていた私は道を引き返した。

結局、塔の下に戻った。通天閣の四本足がホールのような空間をつくっていて、ひとつひとつの声が独立し、乾いている。それがなんだか、落ち着いたのだ。

本当は塔の真下に立ちたかったが、目の前ではタクシーのアイドリング音が常にうなっている。通天閣下バンドがあるとしたら、ベースはタクシー音だろうか。だとしたら声は、足音は、ププーッ——ああクラクションは…… そんなことを考えながら、タクシーとは少し距離を置いた。

新世界の三十分

2025/07/31 19:24-19:54
34° 39′ 8.5068″ N 135° 30′ 22.2516″ E にて

19:24

ランタン ランタン
ランタン?
ランタンついてる ランタンちゃうて
お前 オレンジ色に光ってるからってランタンちゃう

階段で? エレベーターちゃうん? あ エレベーターか
あ あれ スライダーやねん 降りてくんの?
ウォータースライダーみたいにして

じゃんじゃんもあります

あれ? ビリケン
あれや
あれや
あるやろ?

モテると思うの
でも女の子慣れしてない
四月やろ?

わかってるから え だったら向こうそっち行かん方がいい そりゃあ
だって…
わかってるよねぇ?

あ じゃあ明日も寄ろか だって**ちゃんお泊まりするで?こっから
んー?

手ぇふったのに気づいてくれへんって隠してるのももう面白いしさ
手ぇふられた?
うん やっぱ降りちゃった

パパまた滑りにいこな?
おーん

まじで腹たつ

うちは ちっちゃいのしか無理
あぶないで あぶないあぶない

食べる?
けど絶対すぐ酔っ払ったりする

それか明日…
あ マリオ マリオカートや
あれって

19:54

 通天閣を正面に、通天閣南本通りを背面にして立つ。

 程なくして前方から声が聞こえてきた。
「ランタン ランタン」
 私の後ろを指差す妹に、兄は言った。
「ランタン?」
「ランタンついてる」
「ランタンちゃうて お前 オレンジ色に光ってるからってランタンちゃう」 じゃあお兄ちゃん、あれは何かしら? なんて声は聞こえていない。家族は通天閣南本通りへと歩いていった。

 後ろから男たちのやりとりが聞こえてくる。
「階段で?」
「エレベーターちゃうん?」
「あ エレベーターか あ あれ スライダーやねん」
 視界の中に彼らが見えてきた。彼らの視線の先に私も目をやると、塔の腹部から、タワースライダーが蛇のようにせり出しているのが見えた。
「(あそこから)降りてくんの?」
「(うん)ウォータースライダーみたいにして」
 最低限の発話でやりとりをする彼らが、前方へと歩いていく。

 赤子の泣き声、子ども達のはしゃぐ音、中年男性がくしゃみする轟音、タクシーの怒り声ことクラクション、赤子の泣き声。いくつもの文字にできない生活音が、塔の下で重なり合っている。

「じゃんじゃんもあります」
 と、女性がつぶやいた。彼女たちが向かう先には、『串かつだるま』の看板も光っている。それに気づいたら彼女は、「それから串かつだるまもあります」と口にするのだろうか。彼女たちの会話は、前方のタクシー音へと吸い込まれていった。

 年配の男女友達四人組が歩いてくる。
「あれ?」
 目線を私の後ろにやり、女性は言った。
「ビリケン」
 男性が言った。それから彼らは対象を視界に入れたようで、「あれや」(興奮した声で)、「あれや」(冷静に)、とそれぞれのニュアンスの「あれや」を発した。
「あるやろ?」
 私は少し間を置いて振り返り、あたりを見渡した。店先のベンチに金色の子どもが膝を伸ばして座っている。

 塔の下に響く自転車のベル音が、立ち始めて五分が経ったことを告げ、カリカリカリカリ、と車輪の回る音が、目の前を横切った。

「モテると思うの」
 彼女はそれから付け加えた。
「でも女の子慣れしてない」
 それを聞いた彼は、仕方がないだろ、というような笑みを浮かべながら、「四月やろ?」と言った。
 今日は7月31日。二人が大学生だとすれば夏休みで、帰省の時期、地元大阪で再会したのだろうか。話題は共通の友人Aの話に移り、「四月やろ?」という彼の言葉は、君が最後にAを見たのは春で、その時は初々しさがあったのだと、カバーしているようにも聞こえる。あるいはそれは、彼女の弟の話だろうか。

「わかってるから」
 不満げな声をこぼす子供。するとその何倍もの声量、スピードで母親は、
「え だったら向こうそっち行かん方がいい そりゃあ」
 と捲し立てた。
「だって…」
「わかってるよねぇ?」
 悲しみと、怒り、それぞれの感情で震える背中が遠くへ歩いていった。

「あ じゃあ明日も寄ろか」
 子供を腕に抱きながら、顔を覗く父親。彼は首を水平にして言った。「だって**ちゃんお泊まりするで?こっから んー?」
 きっと大阪の実家に帰ってきたのだろう。旅行ではない、と思った。時間の惜しい旅先で、子どものために「明日も寄ろか」を「あ じゃあ」とふいに決める父親がいるとしたら、なんとも手厚いものだ。

「手ぇふったのに気づいてくれへんって隠してるのももう面白いしさ」
「手ぇふられた?」
「うん やっぱ降りちゃった」
 彼女たちの間で盛り上がるその話題には、手を振ること、気づかれないこと、隠すこと、それに気づいていたこと、あらゆる仕草が繊細に詰まっていた。
 帰省の時期、駅のホームで誰かと別れた時のことなのだろうか。彼女は初めから「降りちゃった」になることを自分で予感していた。だから、手をふってくれたことに気づかないという、イタズラをしたのだろうか。

 19時40分。「パパまた滑りにいこな?」
 小さな男の子がスライダーを指差している。堂々とした声だった。まるで父と子の立場が入れ替わったかのようだった。父のやる気のない返答が微かに聞こえた。
「おーん」

 高校生男子たちが話をしている。
「まじで腹たつ」
 いや、おそらく中学生だろう。その声は少々裏返っていて、声音からは声変わりの様子を感じる。

 彼は口にすると同時に、地面にペットボトルを叩きつけた。跳ね上がったペットボトルが地面に落ちる。ぽ っこん——気の抜けるような音が通天閣の下に響いた。

「うちは ちっちゃいのしか無理」
 父親が子どものわがままに対応している。その傍、子どもがふらふらと道路に出ようとしていた。
「あぶないで あぶないあぶない」
 タクシーにぶつかりそうな子どもの手を母親が引っ張った。

「食べる?」
 彼がじゃがりこを差し出すと、彼女は無言でそれを受け取り、口に入れ、止まった会話を再開させた。
「けど絶対すぐ酔っ払ったりする」
 彼女は飲みの予定に悩んでいるのか、その後しばらく無言だった。

「それか明日…」
 彼女が喋り始めると、彼の意識は再び逸れた。
「あ マリオ マリオカートや」
 通天閣の下を、背の低いカーが駆け抜けていく。
「あれって」
 塔の下に轟音が残響した。

*

京都に帰らなければいけない私は、淀屋橋に向かって北へと歩いた。再び道頓堀に差し掛かると、そこはすっかり夜の雰囲気に包まれていて、ネオンの光をそこらじゅうから感じた。

20時25分。例の客が二人しか入っていなかった船に、またも遭遇した。今度は嘘みたいに満席だった。船上だけでは収まり切らず、遊歩道からも観光客が身を乗り出している。彼らはすっかりスーパースターだ。二人しか乗っていなかったあの夕方も、川沿いを歩く何人もの人々、あるいは道頓堀という街全体に向けて彼らはスキャットしていたのだろうか。かくいう私も、観客の一部になっていた。

それから北へと徘徊していると、徐々に観光の雰囲気は薄まり、地元感が強くなってきた。くだけたスーツ姿の社会人とはよくすれ違い、コンビニの前で雑談する若者は皆、小さなポーチを身につけている。大きい荷物は持っていない。彼らの両手は、缶ビールとタバコで、いっぱいいっぱいだった。

三角の公園に黒光りのバイクが何台も停まっていた。バイクにまたがったままの若者と、塀に腰掛ける仲間たちとが、七人ほどで談笑をしている。公園には彼ら以外に人はいなかったが、周りでは(広告の)声が、よく飛び交っていた。

まもなく21時、皆酒がまわってきた頃だろう。公園から少し進んだ、とあるT字路で足を止めた。

アメリカ村の六十分

2025/07/31 20:56-21:56
34° 40′ 24.5244″ N 135° 29′ 54.2904″ E にて

21:56
ライブが早く終わって 飲み行ってるん?
**さんすごいっすね 一旦これで これは はい
俺は… 道頓堀らへんの頂点に君臨してる感じやから へえ
昼やね たぶん昼 去年の? あいつもクソガキやん ないわ うん ない
てかだいぶきつそうだね サンキュ
いやぁ… あほう 頼んでいいっすよ もう
言うていいっすよ でも話聞いたら

21:59
別に タント 何人乗ります? はい 若干二人
はい おす ああ
あれ? これ潰れちゃうんすよね ひよってるやん
あぁ あぁ あぁ ガチです 美味しい?
**は雨に濡れとけ あそこで今… じゃ 行ってみます? 絶品の
はよ帰るよ あ ほんま? まじでカオス
子供ん時に 親と血を やっぱ いまいち
くれる? ひと口ね これでも ひと口でいいよなあ おいおーい
あんま空いてないん? これお前 ちゃんと飯食えよ? はいっ 今から

22:02
観光客が 観光客すぎる
普通にふざけんなよ
わー って あの 一年前だもんね 下級生
こっわ めっちゃこわい ちょっと待ってめっちゃこわい
クローズの世界観やなぁ クローズっすね
入る? 入る入る入る 入る? うん
どっちもロードタイヤの方が走りやすいんじゃないっすか? うん 全然
まあ 山へ行くんやったらあれですけどね
猛者がおる カレー? めちゃ… めちゃくちゃ猛者がおる
ああ なるほどね それじゃ また
ポリス?

22:05
でも住んでてん
**の部屋行ったことないし
すいません ありがとうございました
けど絶対今よかったやん今 次の?
あ せやせやせやせや
もっと 飲んでるやんこっち え 見えへん?
おぉ おぉ 遊んでくれますか?
言うて遊ぶけど 嘘や
そか ほなじゃあ遊ぶけど
じゃあ 私が 巻き込んだの 何パー?
行ってない? 行って え?
行ってない あの日彼氏んち

22:08
やっぱ安いっていいね ね
閉まってる ここ? うん そっちじゃあ行く? まあ まじで?
せやなあ **ちゃんも行ったほうがええで こっち行こう? うん
仕事では まあね 風呂入りて そうね
あー 楽しい 決められへん
てっ てっ てー
DSずっと好きやねん
最後 最終的にさあ あそこもあるから アメ村酒場 ちょいっかい見といて
なんでやろ でほんで電車 ぐらい乗って 普通に
嫌やったらええけどさ 電話しよう
彼氏来てんの?
これ一応 LINEで 別に好きじゃないけど
ごめん スルー

22:11
あ ほんまや でもその代わり出勤やん?
今日… 昨日か えー? なんでやねん 腰痛デートやで?
いや そら大丈夫やろ そうそう むやみに
あるやん あのー 大丈夫やで まさかな?
稼いでる それはありえないでしょ
それこそ昔は 今の時代はあんま 背後に
阪急ってあれ… 中央区?
いや おんなじ区か いや 中央区じゃない 中央区じゃないんか
はよ寝よ ええっと関係ない
えぐいね いや いかついなあ お姉ちゃんがずっと なるほど
無理だよね 並ばんて 君には気まずい それもあるけど
気まずそうに立っとけ 穏やかに
初日はしっかり ゆっくり接客するのって それはだってもう
はり重潰れたやんここ はり重やったんすけどね
ね ほんまやね
九時やから 九時やからまだ大丈夫
じゃあ どっかある? ありますね
うわぁ 心斎橋
えーっとぉー 裏声の域超えてるやん
もう前提に

22:14
いってぇってお前 ****さん 青ジャーきつい
せやろ? ええて 駐車券ない ありがとうございまーす
でも めっちゃおっそい 気をつけてお帰り下さいませー
横浜? 京都市? 初期設定が違うの 出たの?
でもこれ 病院自体が
そうそうそうそうそう だから 病院に…
だからオバケ出るんだよ どっちかって言ったら
だからそれでオバケ出るか あの… ユーロの ヨーロッパの新聞が落ちてたから
そっから出た みたいな ふーん 今もそう
合図で変わるとか 患者さんとかが 苦いん?
四列目まで あって ああ そういうやつね 五列目から 上がるから
はいはいはい 段差の問題ね
五は一番たぶん 安い
目ぇ覚せ もうすっかりよ? でもさあの 甘いのはちょっとって感じなんだよなあ
甘いの美味いじゃん 俺 ぜんっぜん平気
〆は… 炭水化物かい? おっほ 炭水化物食わなぁ
それは年上として ダメだよ? あぁ あぁ
家帰んの? みたいなね

22:17
自分時留守に… めっちゃ助かるう 勘弁してくれい
いや そこちゃうから まあいや 向こうは
それ楽しい? 不機嫌
今日も行ったん? 行ったよ 出身も え 家が?
で 新幹線乗りたい言うて へぇ で でも正直小1ってわかる かな?
調べたんじゃないかねぇ それすごないすか?
ほんで ほんならあの おっちゃんち行くと あぁ まぁ
それすんなら 普通の量あるんやったら安い
あぁ そうなんだ 俺もきっとそれ騙されたわ 期待感? おれ怒鳴ろ いくら?
ちゃうなあ むしろじゃあ 一緒に?
でその後 テントで見てたら バーン下がった
ええと なんかあの 項目が変わったっす? あぁ あぁ あ けど下がってはないねんな
むしろ会社って言うのは なかなか下がらないっすよね
失礼しやす やば いけるやろ あざす
いやぁ 人が変えてくれへんからさぁ そうね 口コミ限定クーポンで安くしたのにさぁ
ママがさぁ どれ? 真っ直ぐ行ったらいいんじゃない? え?
気分が乗らないと
なんかでもめっちゃ頑張ってた感じでしたね まあ ええて
ママ お家から反対やで?

22:20
一緒にいたの?
前は食っただけだもんな 北浜で せやな
忙しい 帰省一回するのも しんど 近くに 近くにはいる
あぁ まぁ だってあれやで? 当時はそう
あぁー 歩いて ホテルまで
え 行けんの? 行けないってだから
行けない 行けないから こっちからさぁ もうツーって行ったらさぁ
もう大丈夫 それつらいね
ありがとうございましたー あざした あざす
あぁ いえいえ すんません いえいえ いえいえ
うん 岩瀬ん中でも あ へぇ お疲れ様でした
おつかれーっす おつかれっす また どっちがやりやすいか
美味しかったです また 薬局のやつやろ? えーでも薬局遠いでしょ?
九時台にはあんま出えへんから 案外押し入れにあったり
いきさつで 間違えられる時も
サービス 間に合わへん これ

22:23
でも飼育枠に入れない?
まぁ 急に 一気に いけるでしょ さすがにだよ
入れるんか? そもそもに
うん うぉ
でもセブンに戻るかもしれないっすよね うん
あ あぁ 断定に近い 効果音
一応見てみる? よかったね いや よかったです
それ言ってくれたら 上からバーンて たぶん樽はある こんなクソ暑いのに
え? たまに やったー
若い女性に うん ね 女性が少ないよね ねぇ 窓際で はい
高いやん 数で バーンて出して はい 集まって座って?
今 四つ橋で飲んでてさぁ
あ 魚のにおいがする 鯖は逃さん よし じゃあ
確かに… 確かに なんで発表せえへんのか 聞いてよ 向こうからはしたことない
したことないの? あ したことないです あ そう?
ちょっとあんまり こっち行ったことない
もうちょい? ここです 来週だもんね そう っすね
一年前はシー
混んでる? 混んでる なんでも どこでも

22:26
本番に え お腹いっぱい
200人ぐらいいた 100人? 200人 いや 150人?
この前の… イベントで150人くらい こういう あり 弁当
あ そうですか 弁当あったの知らんくてさ 買ってきたの?
いや まあまあ うん 実は前に来てて
R-1いける いやいや R-1ですら
ありがとうございまーす チーズとか 梨メロン食いたい せやねーん
あ ごめん ありがとうございます ありがとうございました
ありがとうございました ありがとうございましたー
ありがとうございました ありがとうございましたー
なんとなく こっちから行くと ありがとうございました ありがとうございました
似てる? 似てますよ あぁ ありがとうございまーす ありがとうございましたー
気をつけてー ただ 走りずらい なんか湿気の感じの
頑張ってきてよかった 休み時間でね?
私昨日***と行きましたよ え?どこ? あ 昨日? へぇー
** あぁ **? ****? 本名 へぇ 知って… 知ってるじゃないすか いつも
ああ 昭和42年 それってお前… 昭和で どこ行くー?

22:29
だって見つかんねぇんだもん
なかなかいないからね あっちぃ
直談判してんのかな いやあでも 私は
水着だからやんないぐらいだよね? そう そうそうそう それで言うてん
あっという間やね
それでもう明後日が最後やもんな?

22:32
ほんまや 全部… 全部まわれるかしら むず
みんなでビール飲も いやでも そんな余裕で テーブル必死に
私んち今まで使ってなかったから 飲みたいなぁ アルコールが 飲みたいねぇ
夜よく眠れんじゃん え あのちょっと はめ外しそう
甘いもの食べないとさ えぇ 眠たくならない? 寝れなくならない?
コーヒー飲んでると頭の中がさ え とりあえず 夜寝る前はコーヒー飲む
え えー え カフェインえぐそう
てか家帰ってきたらコーヒー飲む あったかいコーヒーを
そうなんだ へぇー へぇー 私もそう 絶対そう そんな時間にカフェイン摂ったら夜目覚めちゃわん? うんまぁ 覚める そうなん? 歳のせいや
四時までに寝れれば そんなに?
ここら辺で待って うん 待ってる なんか 話すけど 上がるかな?
なんとか上がらな あぁ そうそうそう
自由の思想? ちゃう なんか 帰りたいから お昼にデート
いや 絶対 なんかあそこは? て言われたら そうですよ あれです あれやわ
また じゃ お先です ここまでは? 言えへんわ 言え
そうそう 銀シャリが? どんなやねん
タクシーだったらもう 一万… 二千円くらいです
え それで帰れんの? はい 俺 新地から自分の家まで 一万円… 超えるもん

22:35
やっぱお金がある人が強いんか?
あるよ ある 一番最低でも美味しくなかった場合って
だってヘルプでな? ああ めっちゃ 行かされんねやんかぁ?
だからまあ 行こうと思えば 行けるんだけど そのワックスが とれた? 大丈夫?
それ こっちが気にするわ そやねん そう言うてん
全然こっち大丈夫ちゃうねん
人の店には する ね あ 全然大丈夫でーす って言って
ちゃんととれるんで うわぁ 店ではとれへんで?

22:38
あー いたいた
**のお姉ちゃんは 今日は休みになってる
だ か らぁ やーめてって
でも***さんがあのお うん ****さんにご頻繁に東京にいらっしゃってます
五人でさあ あの 三月とかも 
もう ないかなあ

22:41
ぶっちゃけ言うんやったら
あんまり事務所入ったらあかん
あれやん でも****だったじゃないですか
じゃあ二月には 付き合ってるって
うわぁ

22:44
知らない ごっつ忙しい
そう あの ファミマ
めちゃめちゃうちが… お姉ちゃん可愛い? そんな めっちゃいいやん
最近やっぱ あの 買い付け後なんで 割と売る機会があるんすよ
予想でいいんちゃう? その時は…
それか一旦フって

22:47
そういうのないんちゃう? やばいね 帰んないとね
みんな 引っ越してどうしたんかな ** ひっさしぶりに会った まじか 理想は?
話しかけれんわ とりあえず ****今見てんの? 思ったより
ありがとうございます え 今 移り住んでるの? ですね
て言うたら進まない? ****さんに言ったら
久しぶり 久しぶり 知らん 頼んでないもんな 着いたらやれば?
ちゃうちゃうちゃう 並んでんねん 騒がしいないっつも 人多いな
待ってそんなことある?
なんか欲しいねん だって刺身がないじゃん ぶっちゃけ
**さんこっち もう塞いでる 混んでんなあ ちょっと座ってみようよ

22:50
どうする? 夜はこれからだよ
えーと あのさぁ 大正の方にあるさ…
出身が? 言うて 六個上だから へぇ
なんやねんその 変なタ… 変なタトゥー あの人のタトゥーほんまに意味わかれへん
家建ったら 家建ったら教えて **くんが 全部か? え ひとりでやってんの? 彼
****さん前なんすよ そうかね
一番先頭で行くべき っていうか****はもう オイルなんす
ママ どれが普通にあったの?
ちなみに大丈夫なの? わからん ダンス詳しくないけどさ 一番に踊り出す
うん 誰より真っ赤 自分が一番低く 期待をする… クズみたいな?
気合いがすごくあって 半年に はいはい うーん
で それがみんなやから 聞いてる人にとっては 向こうはなんか
あるはあるんだけど惜しい 多分それで言ったらな?

22:53
でもみんな いろんな男みといた方がええでー って言うんですよ
明日行くから いろんな男みといた方がええで って
**さんもひとりで しっかり しっかり飲んでまう 最後の数字みたいにして

22:56

マチのモノローグ

もし街全体を「一人の人間」だとイメージしたなら、

彼・彼女はこの1時間、どんなリズムで独白を続けていたのだろう。

まず、起こした文字の音数を数え、3分ごと区切ってみる

21:56-21:59 151音
21:59-22:02 182音
22:02-22:05 191音
22:05-22:08 154音
22:08-22:11 215音
22:11-22:14 358音
22:14-22:17 384音
22:17-22:20 423音
22:20-22:23 314音
22:23-22:26 356音
22:26-22:29 433音
22:29-22:32 104音
22:32-22:35 486音
22:35-22:38 188音
22:38-22:41 97音
22:41-22:44 64音
22:44-22:47 101音
22:47-22:50 251音
22:50-22:53 326音
22:53-22:56 92音

それから「*」を10音分として並べてみる

(あくまで小さな範囲での)アメリカ村は当時、このようなリズムで発話していたようだ。
それから私は、アメリカ村を「アメ」と個人のように呼び、起こされた文字を読んでみることにした。

21時56分。
アメは、ある文章を一定の速度で読み進めるかのように15分ほど、リズムをキープしながら喋り続けた。「道頓堀らへんの頂点に君臨してる感じやから」「**は雨に濡れとけ」「こっわ めっちゃこわい クローズの世界観やなぁ」「ポリス?」——そんな物騒な声から、彼は怖い人なのだと少し身構えたが、怖さだけでなく「怖がり」の一面もいくつかの断片に含まれている気がして、少し安心した。

それからアメは、倹約家なのかもしれない。「やっぱ安いっていいね」「一番たぶん 安い」「それすんなら 普通の量あるんやったら安い」「そうね 口コミ限定クーポンで安くしたのにさぁ」「やっぱお金がある人が強いんか?」——そういった声に、生活に対する彼の眼差しが現れているようで、私は勝手に親近感を覚えていた。

22時11分。
徐々に盛り上がってきた彼の発話量は、おおよそ最初の倍になった。最初の3分の音数が「普通に喋ってちょうどその時間で語り終える量」だとするなら、音数が倍以上になったこの時間帯のアメの語り様は、随分と「早口」だったことになる。(3分の中にも些細な発話リズムがあるので一概には言えないのだが、それには目を瞑りたい)

アメはよくオノマトペを使うようだ。「でその後 テントで見てたら バーン下がった」「こっちからさぁ もうツーって行ったらさぁ」「それ言ってくれたら 上からバーンて」「数で バーンて出して」——噂には聞いていたけれど、実際に出くわすと私の耳は興奮した。バーン、ツー、バーン、バーン——私からするとほとんど内容を持たないそれらは不思議と、はっきりと語られた会話よりも私の耳にスゥーっと入ってきた。

22時26分。
それからの3分間、音数は「433」にまで膨らんだ。その大半は、何度も何度も繰り返される「ありがとう」によるものだった。「ありがとうございまーす」「ありがとうございます」「ありがとうございました 」「ありがとうございました」「ありがとうございましたー」「ありがとうございました」「ありがとうございましたー」「ありがとうございました」「ありがとうございました」「あぁ ありがとうございまーす」「ありがとうございましたー」——アメに限らず、おおよそ大体のマチは、店を出た後「ありがとう」をさまざまな形で、自分が思っている以上の量、路上に響かせていると思う。

すると彼の発話が、急に「104」まで落ち込んだ。しばらく喋り続けていたので、疲れたのだろうか。そうも言い切れない。例えば高架下に立っている時、目の前のマチは賑やかに喋っているのに、たまたまその時間帯、頭上を通った電車の轟音のせいで声が届かないことがある。いつかの井の頭公園に立っていた時なんかは、スワンボートがいっせいに水面を叩く音が、周りの声をよくかき消した。そんなふうに、「実際の音の波形」と「文字起こしの波形」は、しばしば逆相関的な振る舞いをみせる。とはいえ、この時のアメは本当にしゅんとしていた。

ただ、その落ち込みは一瞬だった。彼は跳ね上がるようにまた喋り始め、語りは止まらず、ついにこの一時間のピークとなる「486」を記録した。後から思うと、あの静けさは、目一杯喋るための屈伸にすぎなかったのかもしれない。

433、104、486。9分間の極端な浮き沈み。つくづくマチのグルーヴには追いつけない、と思うが、無音だったことも含め、紛れもなく私もその波の一部だったのだから不思議だ。

22時38分。
それからのアメはしばらく静かだった。今日は木曜日、明日はきっと仕事なのだろう。「でもその代わり出勤やん?」「てか家帰ってきたらコーヒー飲む あったかいコーヒーを」「歳のせいや」「俺 新地から自分の家まで 一万円… 超えるもん」——そんな声から、徐々にアメの気持ちが終電に向かっているのが感じられた。あるいは、「〆は… 炭水化物かい?」「九時やからまだ大丈夫」「アメ村酒場 ちょいっかい見といて」「目ぇ覚せ もうすっかりよ?」「どうする? 夜はこれからだよ」——といった、まだ帰りたくない気持ちから、今頃二軒目の店で飲み直しているのだろうか。とにかく、路上は徐々に静かになっていった。

22時56分。
この1時間、音数が「0」になることはなかった。細かく聞き分ければもちろん「0」の時間帯はあった。ただそれは、長くて十数秒というほとんど気に止めない長さで、もっと言えばその裏では酒場から漏れ出る、文字には起こされない微かな声が常時聞こえていた。ともあれこの1時間の中で、アメは3分間、口を閉じ続けることはできなかった。

*

終電が近い。なんとか歩行に似た奇妙な動きをしながら淀屋橋へと向かい、幸い少しほぐれたその足で終電に乗り込んだ。降りる駅が終点だと安心しきり、目を閉じた。

新世界から北へ戻る途中、立ち寄った公衆トイレでのことを思い出す。

すみませんね、床、濡れていて。そう言って奥から出てきた清掃のおっちゃんは、トイレが衝撃的な使われ方をされてしまったこと、それを綺麗にするはずの日中勤務のおばちゃんの清掃が甘いこと、とても暑いこと、だから今自分はうんざりしているということ、そして話は急に変わって、選挙結果がおかしいと思うこと、色々、色々——まぁ、とにかく楽しく生きたいですね、と見知らぬ私にひたすらトークを浴びせてくれた。

だが、当時のおっちゃんの声をうまく頭で再生できない。となると、文字に起こせない。概要を書くことしかできない。私には「大阪の耳」が備わっておらず、あのおっちゃんの声がどんどんぼやけた記憶になっていく。それが悲しい。

途中、「見てこの顔」と指さすおっちゃんの顔が、真っ赤で汗だくでまん丸な目をしていたことだけはビジュアルとして確かに思い出せる。レコーダーなしで、あの音を再生できる日がいつか来るのだろうか。

小林 楓太(こばやし ふうた)

2001年、長野生まれ。東京都立大学建築学科卒業、京都市立芸術大学大学院プロダクトデザイン専攻 修了。街中で聞こえてくる断片的な会話とその文字起こしに着目した記録を元に、執筆やインスタレーション作品の展示を行う。主な展覧会に、「ホワイトノットノイズ——よく喋っていましたね、都市。漂っていた言葉を持ち帰りましたので、お返しします。」(FabCafe Kyoto、京都、2024)など。

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