韓国の冬の寒さと韓国料理の辛さはいつも想像以上なところが、楽しいと感じる台湾出身のカン。韓国へは一度も行ったことがないけれど、フィリピンで韓国人に囲まれて3ヶ月生活したことで韓国に行ったことがあるような気がしているハシモト。会社員たちの葛藤を描いたドラマ『ミセン』をきっかけに、韓国のことが気になり出したかけがわ。そんなインセクツのデザイン部3名で、書籍「MY FAVORITE ASIAN FOOD」に掲載されている韓国のごはんを実際に味わい、記憶の料理を体験すべく、大阪・鶴橋へ行きました。
韓国の食を体験するインセクツ・デザイン部
カン
辛い料理は苦手だけど、本場の味がするキムチが大好き。今はキムチ作りを頑張っているので、キムチ専用冷蔵庫が欲しいです。
ハシモト
最近は「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」に夢中。韓国ドラマはキャラクターを魅力的に観せるのが上手いなぁ。好きなキャラクターはヨンウ&グラミコンビだけどみんないいキャラ立ちなのでもう箱推し。
かけがわ
韓国語を覚えたいと日々映画やドラマから吸収を試みるが、そろそろ耳コピの限界を感じている。いつか使ってみたい韓国語は「ネ スタイル アニヤ(私の好みとは違う)」です。
さっそくですが、今回の “記憶の料理”を旅する国は、韓国です〜
わ〜〜〜!
パチパチパチ
ここは鶴橋のとある韓国料理店にやって来ました。書籍「MY FAVORITE ASIAN FOOD」で韓国のイラストレーターの描いた “記憶の料理”から、「トンドン酒」「ねぎのチヂミ」 「キンパプ」「トッポッキ」の4つを取り上げてみます
さっそく食体験を始めましょう〜
さてさて…何飲みます? 私はトンドン酒が飲みたい!!(メニューからトンドン酒を探す)
トンドン酒…ない…(泣)すみませーん、この「生マッコリ」ってトンドン酒ですか?え、違う?
じゃあ「生マッコリ」にします
本の中で、YPはマッコリよりトンドン酒の方が好きだって書いてたね
…トンドン酒、味わってみたかった。。残念。。
お! 次は、スジコンネギチヂミが来ました!
(本の中で)YPいわく、韓国ではチヂミを料理する音が雨の音に似ているから、雨の日によく食べるそう
日本にもそういう食べ物ってあるかな? 雨や天気を連想して食べられてるものって…
…(考)思い浮かばないですね。台湾にはあります?
…う〜〜ん…ないですね
調べたらあるかもだけど、韓国独特の感じ方みたいだね
…そういえば数年前、英語の勉強をしにフィリピンへ行ったんですけど、韓国人が経営する語学学校やったから、韓国の学生がほとんどで。なので学校の食堂で出されるご飯が韓国料理風やったんです
フィリピンの語学学校の学食が韓国料理?
あくまで韓国 “風”のご飯やから、当然韓国人の学生たちには評判悪くて悪くて。みんな放課後とか週末には、美味しい韓国料理を街に食べに行ってたんですよ
私もバッチメイトのBella(ベラ)と一緒にサムギョプサルのお店に行ったことがあって。そこは韓国人オーナーのお店やから、学食よりちゃんと韓国料理の味がしました。お店の雰囲気もスチール素材のテーブルに簡易な丸椅子のラフな感じで、フィリピンで韓国を感じましたね
…バッチメイトって?
語学学校に同時期に入学したグループのことで、フィリピンで主に使われてるみたいです。同級生的な意味です
へ〜、なるほど
彼女が満足そうにサムギョプサルと白ごはんを食べる様子を見てて、「美味しい韓国料理が食べれてよかったねえ」ってほっこりしてたんですけど、食後に「ここも美味しいけど、韓国に来たらもっと美味しいサムギョプサルがあるよ。韓国に来たら連れて行ってあげる」って、誇らしげに笑ったんですよ
十分美味しいここのサムギョプサルより、韓国にはもっと美味しいのがある…? ってドキドキしました。そりゃ本場で食べるのが一番でしょうね
そうですよね。日本でも台湾料理屋さんがたくさんあって、美味しい台湾料理もいっぱいあるけど、味がちょっと違うとたまに感じますね。やっぱり本場で食べると本場の味が美味しく食べられるね
うんうん。それで、その時に思ったんです。自分の国の料理に自信と誇りを持ってる感じがいいな〜って
そんな誇らしげなBellaにですね、この「もはや大阪料理では?」っていうくらいアレンジされているスジコンネギチヂミを食べさせたいって思いました。どんな反応するかな〜⁉︎ 「これも美味しいけど、チヂミはもっと美味しいのが韓国にあるよ。韓国においでよ」って言いそう(笑)
自分の国の美味しいもの、僕で言うところの台湾料理をおすすめしたいっていう気持ち、すごくよくわかります
私も。そのBellaって子に会ってみたいな。美味しい韓国料理、おすすめされたい(笑)
僕…実は韓国料理…、辛い料理はちょっと苦手なんです
え! そうなんですか?
カンさんが辛い料理が苦手って、初めて聞いたかも(!)
激辛イメージのある韓国料理はあまり食べないけど、予測できない韓国料理の辛さに出会えるのは楽しみの一つだから、韓国料理を食べるのは好き
辛いのが苦手なのに食べるのが好きってどういう感情?
中国語の「又愛又恨」って言葉がぴったりかな
それって、どんな意味?
「好き」と「嫌い」の気持ちが同時にある感情で、例えば、マッサージなんかを受けたとき、痛いけど気持ちいいって感覚と近いかな。韓国料理も、辛いのは苦手だけど食べるのが好きって、そんな感じ
ああ〜分かる!なるほどね
韓国でも、台湾でも、他の国でも、韓国料理を食べる機会が来ると、辛い料理を食べるという大きなチャレンジに挑めるので胸が躍るね。「今から、どのくらいの辛さの料理と出会うのかな」と思っていると、テンションが上がってくる
…辛いのは苦手だけど、辛さに挑みたくなる…と
そう。もちろん、今日もいつも通りお店に入る前に「どのような辛さと出会うかな」って想像して、わくわくしてたけど…
キンパプ、トッポッキ、チヂミ……。今日はなんだか韓国料理を食べている感じがあんまりしなかったかな…。3年前くらいに、韓国で食べたものの辛さと比べると、こちらは辛さがゼロ
辛さと聞いて気になるのは、本で描いてくれたMeg Kimさんは、トッポッキを「小さい頃から慣れ親しんだ味」で、学校の帰り道に買って食べた思い出を書いていたけど、それって、子ども向けの辛さなのかな?
韓国の子どもたちは、今日のご飯みたいに辛くないご飯を食べてる? それとも、ちょっとずつ辛くしていくとか…なのかな? 辛い料理との出会い方も気になる
今日食べた料理は、日本でアレンジされた韓国料理で、味も少し日本人の口に合うように工夫されてたみたいだね
いろんなお客さんが来やすいように、やっぱり日本人の口に合わせた味付けに調整してそうですね。子どもから大人まで食べられそう
3品目のキンパプが来たよー
待ってました! キンパプはあるお店とないお店があるから、出会える確率はわりと低めなんだよね
AE SHOONGさんが描いてたみたいに、ハンガン(漢江)を眺めている気分で食べてみて
うーん…ハンガンか。「(韓国映画の)グエムル-漢江の怪物-」のイメージが強くて、のんびりする気分が難しい…もぐもぐ。AE SHOONGさんのイラストを見てると、京都の鴨川を思い出します。憩いの川辺
………(観たけども)
キンパプ(おにぎり)とか海苔巻きってピクニックによく持っていくよね〜
(カンさん、ナイス)
この「キンパプ」、わりと優しい味やね。ごま油控えめやし
中に入ってるでっかい卵焼きが、全体の味を優しくしてる気がする
過去にライブ帰りに友達と食べたことのある(もぐもぐ)、ごま油たっぷりのキンパプとは、ぜんぜん違うかも
その時食べたキンパプ、けっこうごま油が「ギトギト」で…
キンパプって「ギトギト」にごま油がついてるものなんですか?私が今まで韓国料理屋で食べたキンパプは、日本の海苔巻きみたいな、まさにこのキンパプみたいな優しい感じでしたよ。ほんのりごま油香るくらい
「ギトギト」はそのとき一緒やった友達が使ってて、かなり自分の中で印象的なワードとして定着してる。それからは「ギトギト」か「ギトギトじゃないか」を、キンパプ食べたら、めっちゃ確認してしまうようになったかな
悪い意味合いの言葉じゃなくて、ごま油たっぷりを欲してる時に、ついつい出てくる感じ
「ギトギトキンパプ」「ギトギトじゃないキンパプ」って、なんか口に出して言いたくなる語感(笑)
ラストは、心待ちにしてた「トッポッキ」!
来た来た、わ〜い
おもち大好き!
韓国の人にとってはソウルフードなんですねぇ。
ゆで卵が添えられてるのが定番のセットなんですかね。あとこれにも入ってるけど、「おでん」っていう、薄い練り物も?
Minjin Leeさんは赤くて甘いトッポッキを「永遠の私のソウルフード」とよんでいたのが印象的だったけど…
!!
この日食べた中で一番辛いかも。。
モチモチギュムギュム…(もぐもぐ)
トック(お餅)がもちもちして甘いから、辛さがその分、増してるのかな…?
(日本での)お餅は、甘辛い醤油か、あんことかの甘いものとの組み合わせで食べ慣れてるから、辛さと一緒に食べるのがなんとなく変な感じします
そうですね。台湾でのお餅は、よくおやつとして食べられるのかな。
一般的に黒ゴマ餡かピーナッツ餡が多くて、たっぷりの黒ゴマの粉かピーナッツの粉もまぶされるのです。食べたくなってきたな
わぁ、それも美味しそう!ところで、トッポッキって、おかず? おやつ? おつまみ?
韓国では軽食にあたるみたい。ほんとは、韓国の軽食屋台に行って食べたかったけど。。
鶴橋に、軽食屋台な雰囲気のお店もあるみたいですよ
それもアリかな。。ドラマなんかだと、辛さを増し増しにして、その日にあった嫌なこととか鬱屈した気分を辛さでスッキリ吹き飛ばすようなシーンで「トッポッキ」とか辛いも食べ物がよく食べられているよね
へえ〜! その、辛さで鬱屈した気持ちを吹き飛ばすって感覚が新鮮! 私は辛いの得意じゃないので、辛いものを食べるとこう、ギュッと肩に力が入って精神の修行してる気持ちになるので…辛いのが平気な人は、スッキリするんだなぁ
食べ切ったあとにスッキリだから、ある意味、食べてる最中は修行なのかもね(笑)
辛いもの食べてスッキリって感じ方、面白いね
さてさて、今回、「MY FAVORITE ASIAN FOOD」に掲載されてる食を追いかけてみたけど、それぞれ、どうだった?
いつも思ってる以上に辛いことが多い韓国料理だけど、今回は逆で、予想より全然辛くなかった。ゼロの辛さ
辛さの度合いがいつも予想から外れるんですけど、それが韓国料理の醍醐味だと思う。また次回、どのくらいの辛さと出会うのか楽しみにしていますよ
辛いのがそんなに好きじゃないのに、辛いものとの出会いが楽しみって、カンさんのその辛さチャレンジ精神、面白いですね
確かに、それぞれ韓国のイラストレーターの描いた絵と、思い出の文章から食体験をする今回の試みで、3人それぞれの思い出記憶も少しずつ紐解かれて、みんなの体験した思い出話が、色々聞けたことが、面白かったし、刺激になった
今回挙げた4つの思い出の料理がきっかけで、みんなの味や食の好みから、想像力までいろんな熱量が私の中にも伝染された気がする
本を読んでイラストレーターさんたちの食べ物の記憶を疑似体験して、その後に実際に食べてみて、記憶が立体的になった感じがしました。でも今回食べたものは日本人の口に合わせた味付けだったから、次は韓国でそれぞれの食べ物を実際に食べてみたいな
そうですね。機会があれば、現地でイラストレーターさんが実際に食べてる料理も味わってみたいです
次の食体験「台湾編」も楽しみになってきたね
なんと、カンさんが台湾のご飯を作ってくれました!お楽しみに〜
“記憶の料理”を体験すべく、韓国食をいただきながら、さまざまな話へと飛び火していった “「MY FAVORITE ASIAN FOOD」を食べる” でしたが、いかがでしたでしょうか。
料理の体験は千差万別、人によって記憶や思い出の定着も形はそれぞれ違います。だけど、書籍「MY FAVORITE ASIAN FOOD」の韓国のページを通して“記憶の料理”の一端に触れ、食事をしたこの夜の体験は、好きなものや嫌いなもの、さまざまな思いや思い出、自分の中の食事に対する嗜好や他人の傾向まで、いろんな刺激を与えてくれた気がします。また他人の記憶から自分の記憶も呼び覚まされる感覚を、気づかないうちに感じているのです。不思議なことですが、その感覚をこの書籍から感じ取っていただければと思います。次回の “「MY FAVORITE ASIAN FOOD」を食べる” も、ぜひお楽しみに。
そのほか「トッポッキ」を描いた韓国イラストレーターの作品
「MY FAVORITE ASIAN FOOD」書籍はこちら
日本・台湾・韓国・香港 60名の作家が参加! 「記憶に残る料理」を描く、イラストレーターの作品集。
「MY FAVORITE ASIAN FOOD」通常カバー版
今回紹介した作品の他にも、韓国のごはんと作家の思い出が掲載されています。日本・台湾・香港の作品も合わせてお楽しみください!
「MY FAVORITE ASIAN FOOD」
《特別ケース入り版》 ※箱の絵柄は全4種
IKOONG/作品タイトル「냉면(naengmyeon)(冷麺)」(韓国)
※書籍本体の内容はカバー版と特別ケース入り版のどちらも同じです。
※特別ケース入り版にカバーは付いておりません。