まだ日本へ来る前に、よく日本のドラマを観ていた、その中でよく出てくるシーンのひとつで。登場人物が風邪をひいた時に、家族がお粥を食べさせてあげるイメージが強く残っていた。お粥は病気になった時の食べ物なのかと不思議に思っていた。なぜかというと、台湾だとお粥という食べ物は、朝ごはんや夜食として日常的によく食べてるからだ。お粥の専門店はどこにでもあるし、お粥の種類もいろいろあり、台湾風の海鮮お粥や、香港風の「廣東粥」など。お粥を食べたくなったら、どこでも売っているので、いつでも美味しく食べることができる。だから、お粥は風邪をひいた時の食べ物という認識が全くない。
日本で暮らし始めて、一度ひどい風を引いた。その時に、日本人の友達から「お粥を持っていきますねー」というメッセージが来たので、ハッと「ドラマで観たことは本当なんだ」と実感した。お粥のカルチャーショックだった。
正直言うと、お粥の料理が特に大好きというほどではない。普通くらいだ。だけど、台湾にある「清粥小菜」というお粥の食堂でお粥を食べることは好きだ。台北だと、24時間営業しているお粥の食堂があって、そういう食堂に行くと、おかずが店頭にたくさん並んでいる。見ているだけで、並ぶおかずたちのインパクトでテンションが上げってくる。たくさんの種類のおかずを注文すると、いろいろな味を味わうことができる。それはお粥を食べる時の楽しみの一つだ。
先月、台湾の家族に大量の台湾物産を送ってもらった。年一回の、台湾食材補給だ(笑)。今回は、その中に何種類か缶詰のおかずがあり、それはよくお粥と一緒に食べられる。それがあれば、日本でも台湾風のお粥が食べられるので、週一回の朝ごはんで台湾風のお粥を食べた。白いお粥と茶色系のおかずを盛り付けると、これはやっぱり台湾のお粥だと思いながら、満足感が溢れる幸せな朝タイム。
今でも、台湾でお粥は日常食の一つとしてある。特に年配の方は、昔からずっとお粥を朝ごはんとして食べていたので、お粥以外の洋風の朝ごはんがあまり口に合わない。うちのおじいちゃんとおばあちゃんも毎日お粥を食べている。おばあちゃん曰く、「お粥と漬物の組み合わせが一番美味しくて、安らぐ味がする朝ごはん」らしい。
台湾のお粥の種類はいろいろある。その中の一つ、お米にたっぶりの千切りさつま芋が入っているお粥は、とても伝統的な台湾料理だ。昔はお米がとても貴重なものだった、貧しい人はお米を買えないので、お米の中たくさんの安いさつま芋を入れて炊いた。それで「地瓜粥(さつま芋のお粥)」ができた。農作業をする前に、日々「地瓜粥」で腹ごしらえをした。今では、誰でもお金でお米を買う余裕があるので、「地瓜粥」を食べる必要はなくなったけれど、それでも皆がよく食べるし、私も大好きだ。国民食になっていて、その素朴な美味しいさはいつでも食べたくなる味なのだ。
シンプルなお粥というのは、国によっての食べ方や食べるシーンが大きく違っている。こういう食文化の違いは、すごく面白い。自分が当たり前のことだと思っていたのに、違う立場で見ると、実は斬新な世界観が広がっている。このような小さな発見がたくさんできることが、日常生活の中で至福の時間だ。
簡 子傑(デザイン部。台湾出身)