TALKING HEADSをそんなに聴いた記憶はないのだけれど、しばらく前の2021年5月、マスクをしながら劇場で映画「AMERICAN UTOPIA」を観た。(今でもマスクをつけているなんて、あの時は想像もしていなかったけど…)その時、この演劇でもあり、パフォーマンスでもあり、ライブでもあるこの映画に大興奮を覚えたのと共に、DAVID BYRNEってこんなによかった? という疑問が湧き上がった(ファンの人ゴメン!)。
私と同じ思いに至った人は少なくないように思うけれど、どうだろう?
とは言え、この作品の“この現場に観客としていたかったと思わせる度”は、かなり高い。映像で観てあれだけ楽しい、興奮を覚えるのだから、実際観られたらと思うと、ゾワっと鳥肌が立ちまくるに違いない。何がいいのか、その要因はたくさんあるだろう。よく言われる、彼の政治的なメッセージや、ユーモアのセンス、映像のクオリティの高さ、スタイリッシュ、どれをとってもベストだ。でも私にとっては、「Mo’ Better Blues」からの彼の映画のファンであるスパイク・リー監督作ということも大きい。そして何より、ディストピアに向かいつつあったあの国で、アイロニックに「AMERICAN UTOPIA」というタイトルも最高だった。現在の日本もそのムードはプンプンだ。
1ドルが140円迫ろうとしている中、上がる要素もそうそうなさそうな2022年8月現在。落ちるところまで落ちないと日本人は変わらない、なんていう人もいる。
JAPANESE DISTOPIAはもうすぐかもしれない。
松村貴樹(インセクツ代表)