大阪の大きな通りに御堂筋がある。淀屋橋から心斎橋を通過して難波まで走る道だ。
何年か前のとある日、わたしは事務所がある肥後橋から東の淀屋橋方面へ抜けて陽の沈む夕暮れ時をてくてく歩いていた。ちょうど、その御堂筋を渡ったころ、小学生と思われる一人の少年に急に声を掛けられた。
「すみません、難波はどっちですか?」
一瞬、道を聞かれたことに気がまわらず、「えっ?」と周りを見渡して、小学生がこちらを見ていることに気づく。ハキハキ答える声には淀みがない。大人にも物怖じせず、「難波に行きたいんです」そう少年はしっかりと言葉をつなげた。
その立ち振る舞いから小学生は高学年のようだが、中背で小脇に、体には少し大きいスケートボードを抱えていた。
…まさか、スケボーに乗って淀屋橋から難波まで…?
私の頭の中は疑問符でいっぱいになった。。
気を取り直して、質問に答える。南を差し、
「この道をまっすぐ行くと難波だよ。そのスケボーに乗っていくの? かなり遠いよ?」
少年はぶっきらぼうに答える。「そうです。平気です。」
そう言ったかと思うと少年はサッとスケボーに乗り、ガーガーと車輪の音を響かせ颯爽と行ってしまった。
大人でも淀屋橋から難波までは歩いてかなりの距離がある。スケボーに乗ったとしても、さらに小さな体でスケボーを蹴りながら走らせて行くには、相当の体力が必要じゃないのかな?と夕暮れのかなり陽の落ちた中、心配を抱えながら少年を見送った。
スケボー少年との会話は時間にして、ものの5分くらいのことだったけど、何だか印象強く記憶に残っている。今でもふと思い出し、夕闇に走り出した少年の後ろ姿がたくましく見えて、難波まで無事たどり着いたのだろうか?と、その後の少年のスケボー道中が気になって仕方がない。
掛川 千秋(デザイン部)