人生ゲームをやったことはあるだろうか?
日本発ボードゲームの大定番なので、遊んだことがある人も多いだろう。
もはや説明するまでもないかもしれないけれど、ルーレットを回してコマを進め、仕事を選んだり、家族が増えたり、家を買ったりと、いかにも人生で起こりそうな出来事を通過しながらゴールを目指す、すごろくをベースとしたゲームだ。
この夏、大学時代の友人の実家に泊まりで遊びに行った際、引っ張り出されてきたのが人生ゲームだった。人生ゲームにはいくつか種類があるが、この時出されたものは『人生ゲーム M&A』。M&Aとは何のことなのか? パッケージも、イラストレーター・早乙女ケイ子さんのイラストが施されており、スタンダードな人生ゲームとは何かが違うよう。
開けてみると、企業カード、攻撃カード、防御カード、資産カード、提携企業カードなど、見慣れないアイテムが入っている。普通は家や株券などが入っているが、それらは見当たらない。どうやら、人生の大きな出来事を総合的に取り上げているベーシックなシリーズとは異なり、起業家として仕事に特化した人生に設定されている模様。扱う金額も通常より桁が多くなっている。
まずは、各自10億円(!)を資金に「名もなき企業の経営者」としてスタート。本編のコースを始める前に、資金を獲得するためのループ状のコースの中で資金を増やしていき、そのお金で企業を買収する。企業の内容は、玩具、放送、家電、IT、アミューズメント、アパレル、食品、ネット銀行など様々。それぞれ純利益が異なり20億〜300億とあるが、純利益が高いものはその分買収価格も高くなるので、手持ちの資金が足りなければ買収はできない。このタイミングの見計らいどころが大事で、純利益の高い企業を買うためにいつまでも資金集めをしていると、他のプレイヤーに先を越されてしまう場合もある。また、企業を買収できた人から、ようやく本編のコースに進めるのだが、企業を買収できないまま最後に残ってしまった人は、「名もなき企業の経営者」のまま強制的に本編のコースに移ることになる。そうなると、決算日に入ってくるお金が少なかったり、提携企業がつかなかったりと不利なのだ。
私は、ここのターンで早速「玩具」を買収し、一番にメインコースに進んだ。玩具は純利益20億/買収価格100億と、最も安いカード。わけもわからず、とりあえず買えるならと買ってみたが、純利益が度々現れる決算日に入ってくるお金と知り、もっと資金を貯めるべきだったかと若干後悔…。だが、後から利益を増やすこともできるので挽回のチャンスはあり。コマの指示次第で企業を追加で買収することができる。あとは、普通は結婚相手や子どもが増えていくが、M&Aでは優秀なパートナーや弁護士を同乗させることができ、その人数によって決算日に入ってくるお金が増えることも。
また、「敵対的M&A」のコマに止まると、他プレイヤーの持っている企業の買収を仕掛けることができる。攻撃カードはプロキシーファイト、ファンド、人脈、ハッタリなど、防御カードはホワイトナイト、ポイズンピル、焦土作戦など、それぞれ企業ならではの攻撃・防御術が書いてあり、内容によって0〜5点になっていて、繰り出すカードの合計点数で競う。
私は途中で、友人から「IT」を買収成功! 相手はもともと点数が低い防御カードしかなかったようで、捨て身の勝負をしてきた。こういうこともあるので、点数が高いカードを出せばいいというわけでもないのが難しいところ。なるべく点差が少なく勝てるようにしないと、無駄にカードを消耗してしまう。そして数ターン後には買収仕返されてしまった(笑)。たまたま間に決算日があったから利益はあったものの、決算日前に取り返されたりしたら何の意味もなくなってしまうのが怖いところだ。
他にもプロ野球チーム、競馬場、など資産を購入することもでき、それらはゴール時にルーレットを回してその数字で査定し、価値が上がれば購入額の10倍、下がれば1/10で換金されてしまう。資産価値が変わってしまうのはリアルだが、この落差は恐ろしい(笑)。
今回のゲーム結果は、私が1着でゴール。最終的には所持金で順位を決めるのだが、友人たちが1兆円代や2兆円になっていたところ、なんとぶっちぎりの6兆円という結果で優勝!
勝因は「自動車」「ネット銀行」を追加買収し、その企業価値が上がったこと。自動車はただでさえ純利益350億と高額なのだが、企業価値がアップすると純利益1750億にもなるのだ。
終わってみて、結局「M&A」って何だったんだろう?と調べてみると、「Mergers and Acquisitions」の略で、企業の買収と合併のことらしい。言われてみれば、知らず識らずのうちに企業の買収と合併を繰り返させられ、それに必要な手段や能力などを学ばされるゲームになっていた。人生ゲームの中でも、あえてこれを選んだ友人のご両親の、ただでは遊ばせない教育熱心な姿勢がうかがえる…。
実はこの「人生ゲーム M&A」は堀江貴文氏(ホリエモン)が監修し、2005年に発売されたのだが、翌年に堀江氏が証券取引法違反容疑で逮捕されたことで発売中止となった、幻の人生ゲームらしい。まさかそんな裏話があったとは。
人生ゲームはその後も新しいシリーズや進化を続けていて、最近ではインフルエンサーを目指す「人生ゲーム+ 令和版」なんてものも出ている。
こんな風に意外と知らない進化版もあるので、人生ゲーム経験者のみなさんも久しぶりにやってみると、また楽しい発見があるかもしれない。