はっきりとした四季がない台湾は、夏が長くて、冬になってもそんなに寒くはない国だ。日本の天気は割とはっきりするからいいなと思った。春夏秋冬に違う景色があり、食卓の上にある風景や料理の表情も季節の変化によった食事ができる。日々に食べている料理から季節の更迭(中国語で移り変わりという意味です)が感じられることが小さいな幸せだ。
例えば、猛暑の夏、ざるに盛られた素麺を食べる時がそう。台湾だと、手元にある食べ物は何になるかな?とよく思った。それは「粽(ちまき)」だ。なぜなら、台湾の夏にある端午は、食の好みは関係なく、台湾のみんなが粽を食べる風習があるからだ。もちろん私も。日本でも端午の節句に「ちまき」は欠かせない存在だけど、台湾の粽というのは、おこわを竹の葉で包んだもの。日本のちまきとは全く違う。
なので、私の昔の夏のメモリーは、一個一個のふくよかなちまきに凝縮される。
小さい頃、おばあちゃんが粽を作ってくれた姿を今でもよく覚えている。その時の私は、何も手伝うことができず、台所でおばあちゃんの横に立って作業をみるだけ。それでも楽しくなってくる。夏特有の楽しみだ。そんな美味しい粽は、実に奥深い。台湾では、いつでもどこでも粽が食べられる。コンビニでも売っている。だから、手に入りやすいし、自分で作ろうとはあまり思わなかった。とはいえ、今は台湾の粽がない日本で暮らしているので、遠く離れた国で自分の国の伝統料理を作るのは楽しそうだなと思い、最近、本格的な台湾粽を作ってみた。
粽作りといえば、欠かせない材料がいくつかある。まずは、竹の葉である。台湾ではどこでも売ってるけど、日本ではあまり見かけない気がする。たまたま家の近くに小さな中国物産店を発見したので、休みの日に粽の服を探しに行ってみると、意外と売っていた。それは台湾産ではなく、中国産の竹の葉だったけど。とりあえず、買って帰ってきた。あともう一つ欠かせない具材は塩漬け卵黄。なかなか日本では手に入れにくいなと思って、一回ネットショップで検索したら、売ってたのだけど、値段はちょっと高い。「自分で作ってみましょうか」っと、それも面白そうな楽しみの一つになった。
材料を揃えたら、早速作ってみよ!記憶にあるおばあちゃんが作ってくれた時の方法や、ネットで調べたレシピを参考に、写真のような粽を頑張って包んでみた。最初、どう頑張っても粽の形があまりきれいでなくなるので、これでいけるのかな…?煮たら具材が溢れちゃうかな…と不安を感じつつも、粽を包む練習をし続けた。徐々にうまく出来てきて、形ももっときれいに作れるようになってきたので、楽しい時間を過ごせました。同時に、包む作業で癒されることになった。ちなみに粽を湯でて煮たら、形も崩れず、しっかりきれいな三角形になった。初めて作った粽を、もしおばあちゃんが見たら、合格をもらえるんじゃないかなと思った。(笑)
台湾の粽と言えば、種類がたくさんあって、甘いもの、肉が入っているもの、ヴィーガンに向けのもの、豪華な食材が入ってるもの、海鮮入りなど、色々な人の好みに対応できる。家庭によって、粽の味付けや具材も異なっている。さらに地域によって違いがあり、大きく分けて北部の粽と南部の粽とで異なる。その最大の違いはもち米の調理方法にである。北部でよく食べられる粽は、もち米と具材を必ず蒸すか炒めて火を通し味付けをしてから、包むのだ。味や香りは濃厚。南部の方は洗ったもち米と具材を竹の葉に包んで、鍋で煮る。出来上がったら、醤油ソースや甘辛ソースをつけて食べる。味は比較的薄く、具材の味が楽しめる。
おばあちゃんは南部出身なので、いつも南部の作り方で粽を作ってくれた。おばあちゃんの味を再現するために、今回は、南部の粽を作ってみた。
私が作った粽の味はまだまだでおばあちゃんのレベルには届けない。とはいえ、粽を作る時間がより楽しくなるのは最高だ。作る前におばあちゃんとテレビ電話をし、粽のレシピを教えてもらって、コツもたくさん伝授された。しかも久々に日本で台湾語を喋ったので、違和感を感じつつも、家族との楽しい時間になった。
ただ、自分の国の食べ物を作るだけ、こんなにたくさんの楽しい気持ちを感じられるとは、今まで思ってもみなかった。それは料理作りの魅力の一つかもしれない。
とにかく、竹の葉がまだ大量に残っているので、本番の端午(毎年の旧暦5月5日に、今年は6月3日)が来る前に、粽を包むことを練習し続けようと思いつつ、おばあちゃんの味が作れるようになるまで頑張るぞ!
最後に、もし台湾を訪れる機会があれば、ぜひ台湾の粽を食べてみてください。竹の葉を開けて、何の具材が入ってるかというサプライズな楽しみも、台湾粽の魅力だ。
簡 子傑(デザイナー。台湾出身)